関東で阿波踊りを始めた人が、初めて「とくしまの踊り」に触れる時、
多くの場合、有名連さんの踊りにまず着目します。
それしか情報が入ってこない、ってのもありますが、ちょっとでもかじって
いれば、その踊りのクオリティの高さに恐れ入ってしまうし、その
裏に感じられる取り組み姿勢のストイックさとか、人生の中で阿波踊りの
優先順位が超高くなってる価値観とか・・・の「物凄さ!!」に、大なり小なり
衝撃を受けざるを得ません。
でもって、「徳島の阿波おどりは、こうだよ」みたいに語る人って、
東京にはいっぱいいますが、やはり多くが、「徳島の踊り=有名連」のこと
を指してる場合が多いです。
私も、長らくそれしか知りえなかったし、技術もそのストイックな姿勢も、
そりゃあ、東京の商店街の親子が集まってるような連とは全然
違いますから、余計に、「“徳島”は違うんだ!」って認識してました。
でも、よくよく考えれば、地域の経済を支える大きな要素『観光』の
重大な資源である「阿波おどり」、という背景があって、まさに
“観光客から銭もらって見せる”部分を責任もって担わされる運命の連と、
駅前の商店街が予算組める範囲で振興イベントとして開催してる
「そこだけのお祭」で踊ってる地元連とでは、軸足を置いているところが
そもそも違います。技術や姿勢を比較して論じること自体
無理があるってもんです。
それに、徳島の阿波踊り自体、観光資源としての側面だけでなく、
そもそもは町の祭り「盆踊り」である、という側面が先にあります。つまり、
「銭とって、人に見せる」ために踊る概念の必要ない連のほうが、
土地の人には自然な姿のはず・・・ですよね。
とくしまだって、「有名連的にはタブーだけど、一般連的にはそんなことない」
ってことがいっぱいあるはずです。首都圏の連がお手本として真似る時、
技術以外の面では、有名連基準より、ご近所連とか、親子連とか、
同好会的な連とかの価値観ややり方から学ぶほうが、合ってるものも
あるでしょう。っていうか、有名連さんが切り捨てざるを得ないものが、
そういうところにあって当然でしょう。。。
って、常々思ってました。
だから、そういうフツーの連と、踊ってる人が、
もっともっと見たかったんです。
※ 「とくしま」と「徳島」の表記について
あくまで私の場合ですが、徳島市の阿波おどりを指す固有名詞として
使う場合は、ひらがなで「とくしま」と書くようにしてます。一般地名の
「徳島」と、意図的に使い分ける場合が多いです。
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二つの橋の周辺の無料の桟敷や踊り広場では、保存協会の連とか、
市外の県協会所属連とかが大活躍してましたね。4日間で、3回も4回も
5回も・・・会っていた連もいくつもありました。本家大名連さんとの
遭遇率が突出してましたが、他にも、蔓連・武秀連・隠元連・
歌舞伎連(&江戸歌舞伎連)さんらともよく会いました。県協会のほうは、
達粋連・八千代連さんと相性が良かったようです。奴連・豆狸連さんも
歩いてるとこに何回もすれ違ったなぁ・・・。
よんでん広場とか、NHKとかのエントリーを見ると、これらの連に
加え、市外・県外から来ている知名度の高い連の名前がたくさん
並んでいます。
広島のもみじ連さんは見ましたが、大阪近辺の連には当たらず・・・。
阿波小町連・阿波写楽連・歌舞伎十八番連・極楽とんぼ・無作連・・・
も桟敷や踊り広場によくいました。鳴戸の連も無料桟敷や
路上の輪踊りでよく見ました。
これらの連を「一般有名連」て呼ぶこともありますが、なんだか
微妙でイマイチ意味わからん線引きだなぁ・・・・(^^;
それから、組踊りを見せる会場にはほとんど入りませんが、
無料桟敷や路上で輪踊りしているジャカジャカ系もほんとに
たくさんいました。華舞遊、苔作、竜美、匠・・・くらいの規模の
ところは、桟敷でも見たし、輪踊りも見やすかったですが、
人気どころの大黒天、七彩連、双六連などは、そこに居るけど
人垣が厚すぎて近寄れない〜・・・って場面も何回かありました。
改めて、ジャカジャカ人気の根強さを体感しましたね。
有料演舞場は33の有名連さんたちがメインですが、無料で
組み踊りや流しを見せる会場では、これらの連の皆さんが、
観光客の収容ニーズを支えている、ということがよくわかります。
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小さい連を見る時、33の有名連さんに比べたら、技術的な精度や、
張り詰めた「気」のようなものにため息が出ることは、正直少ないです。
実力連といわれている連にも会いましたが、凛とした緊迫感や
熟練技の群舞に感動する(☆o☆)!って、感じとは違いました。
言ってみれば、もっとユル〜いです。
でも、心打たれるものがないかと言えば、決してそんなことはなく、
技術の高い踊り子さんも、一線を越えた深い味わいの表現の粋に
達してる踊り子さんも鳴り物さんもいました。技術ではない何かに
惹かれる光景も、いっぱいありました。
勝浦在住のあわともさんがいるのですが、「勝浦で生まれた
“よあかし連”さんて、結構好きなんですけど・・・」って話をしたら、
「なんで知ってるん?」て、驚かれてしまいました。
映像でしか見たことなかったんですが、なんだか「昭和の感覚」漂う
雰囲気が独特で、印象に残ってました。HP見ても、突っ込みどころ
いっぱいで(ww)、着付けひとつとっても、なんだか“わざと”
「洗練されてない感じ」にしてるみたいなレトロ感が、かなりツボでした。
そのよあかしさんの輪踊りに、1回だけ遭遇できました。ナマで見ると、
思ってたよりずっと真面目で渋い連でした。一応、県協会所属連で、
踊りも音も正統派で真面目です。HPに載ってた女踊りのレトロな
着付けは、やはり時代の流行に抗いがたかったのか、それなりに
今風になってました。
けど、有名連さんの流行に反して、笠はまだまだ低い被り方で、ちょい
「眉むそう」テイスト。ハイクオリティな群舞とかはありませんが、地味で
味わいのある連でした。
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いわゆる「B級連」さんには、意外にそんなに会えませんでした。
もしかしたら、市役所演舞場とか、幸町おどりロード(今年からできた
80mの無料桟敷です)の方まで足を伸ばしたら、もっとそういう
「聞いたことない連」にたくさん会えたかもしれませんね。
それでも、アーケードの中や、無料桟敷では、いくつかの面白い連に
会いましたよ。変なことに挑戦して、本人の意図に反して笑いを誘ってる
おちゃめなチャレンジャーとか、浮かれすぎてハメをはずして、年配者に
怒られてるお馬鹿な若者とか、おいおいおい・・・という、コスチュームや
小道具とか・・・・B級連のオモシロぶりは、首都圏のその系より、ずっと
パワフルです。
企業連が、宣伝のために阿波踊りしてるところもありましたが、ただ
だらだら言われるままに踊って、会社名さらしてるだけではなく、
めいっぱいB級連としての楽しみを追求してるところも目立ちました。
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私はもともと「見る阿呆」がいるべき立ち居地と思ってるので、あまり
こちらから出演してる人に、積極的にコンタクトとったりはしません。
が、徳島の阿波踊りのことについて、そんなにストイックでない普通の
阿波人の皆さんには、聞いてみたいことがいっぱいあったりもしてます。
なんで、小さい連やB級連の人たちには、声かけられる範囲で、
ちょっとだけお話聞いてみたりしました。
普通の連のやってること、考えてること、陥ってる状況、悩んでること、
流行ってること・・・・・若者のやりたがること、ちびっ子がつまづくところ、
「有名連優遇」という、首都圏にはない格差文化ゆえの大変さ・・・・・
ちょっとだけわかりました。相対的に、首都圏のローカルエリアとほとんど
変わらないかもしれないことが、たくさんあるな、とも思いました。
伝統を大事に継承すべきか、新しいことをどんどんやるべきか、の
ほどほどラインの葛藤なんて、全然おんなじ!です。むしろ、とくしまの
ほうが、突飛な挑戦や新しいファッションの取り入れ方が進んでると
思える光景もたくさんありました。あちらでは、前衛的な部分も、
保守的な部分も、こっちよりずっと奥が深いんじゃないかと思います。
(それゆえに、分裂したりごたごたしたりとか・・・・この世界にありがちな
いろんなことも、それなりに多いのでしょう。。。とも推測しときますww)
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何度も繰り返してますが、ナマのとくしまを見られて、有名連さんが
発している観光客向けの綺麗な部分に目を奪われていると、
見落としてしまいそうなことって何なのか、自分で見て
考えられる機会が少しでも持てて、ほんとに良かったと思ってます。
有名連さん文化だけがとくしまじゃないです。というか、有名連さんも
含めて、もっともっと広く大きなところから包括的に見ないと、
現地の皆さんにとっての「阿波おどり」とは、違う偶像になって
しまうかもしれない、と感じます。
徳島の人はおおらかで、親切でした。
関東の皆さんも、ストイックに技術を追求するだけでなく、あの
ほわぁ〜んとした部分も大事に受け取って、身にしていけたら、
もっともっといろんなものが見えてくるんじゃないでしょうかねぇ・・・。
いやぁ〜・・・阿波踊りって深いですよ、ほんと。
[今日の一枚]
武秀[ぶしゅう]連のお姉さん。興源寺にて。
保存協会さんの古い連は、自由奔放に踊りの味を見せるのびのび派の
ところが多いですが、平成になって設立されてきた比較的新しい連は、
積極的に組み踊りの出番に出て行くところが目立ちます。
はっぴのお姉さんたちの元気さが目立つ武秀連さんと、
黒の浴衣の女踊りの群舞がインパクト強い蔓[かずら]連さんの勢いが、
とても印象的でした。
[おまけの一枚]
B級連の話となれば、この連を
抜きにしては、語れますまい・・・^^
東新町アーケードに、ある決まった
時間の頃にいくと、いつもいることを
学習しました。
おでかけですか〜レレレのれ〜。。
で、おなじみ「れれれの連」!